誰に、貴方の財産を残したいのか。
この問いには正解がありませんので、貴方が自分と向き合って、想いをまとめるしかありません。
一時的な感情で決めてしまうと後悔することも有り得ますし、法律面だけで考えてしまうと、情のない、冷たい終活になってしまうでしょう。
最終的に決めるのは、決めるのは貴方自身になります。
ちょっと例を考えてみましょうか。
相続税……まぁ、普通に考えれば、相続税を安く出来れば、貴方の財産を子や妻により多く残すことが出来る……方法論としてはそうなりますが、これが貴方にとっての理想の答えとは限らない訳です。
各相続人の最低限の取り分である遺留分という制度もありますが、あえて遺留分を無視した遺言書をつくることもできます。
さらに、さまざまな法的リスクを防ぐことは、相続の専門家である弁護士や行政書士、税理士などの専門家に相談すれば解決できますが、さまざまなリスクを知ったうえでの最終判断は、貴方にしか出来ません。
そのためにはまず、自分がどうしたいのかということを、あなた自身が知っておく必要があります。
自分の想いと向き合って、財産を残す相手と方法が決まったら、ここから遺言書の作成や生前贈与など、具体的な対策まで行ないましょう。

ですが、終活とはいえお金のことだけを考えて自身の納得いくものにはならないでしょう。
貴方の大切な人にしっかりお金を残すには、情だけでも、法的な対策だけでも不十分。
貴方は、貴方の想いとしっかり向き合って対策を検討し、具体的な対策をする際には、法的な対策とあわせて情が残るようにしていきましょう。
終活のなかで特に重要な相続の対策は、生前の元気なうちにしかできないものが大半を占めます。
ここに例をあげてみましょう。
・相続税対策としての、生前贈与や資産の組み替え
・争族対策での遺言書の作成
・銀行口座の整理
・不要な不動産の売却
これらは、いずれも貴方本人にしかできません。
今までにも認知症についての記事を書いてきたのは、この記事のため、という訳ではないんですが……認知症になってしまえば、たとえ後見人であっても、あなたの代わりに、遺言書を書くことはできません。
また、貴方の財産を贈与出来ない可能性もあります。
成年後見人の業務は、被後見人の利益を守り、身上を監護することですので、被後見人の利益にはならない贈与は、成年後見制度の趣旨から考察すると、原則認められない可能性があるんです。
仮に、節税対策のための贈与であってもこれは同様です。
つまり、貴方がまだ元気だから、相続対策なんて早い、と考えるのは早計だということです。
私の父もそうですが、病気になってはじめて土地のことや保険のことなどの色々な情報を私と共有しはじめましたからね。
相続対策のほとんどは元気なうちにしかできません。
本来は生前、元気なうちに相続対策をすべきなのですが、相続が起きて、すでに困ってしまってから考えだす人が大半、というのが現状だそうです。
「ご本人が生前にきちんと財産分与なり、土地の処分なりの対策をしていてくれれば、こんなことには……」というケースも多々あります。
他にも、相続人のひとりである二男が、相続が起きた途端に音信不通となり、手続きにまったく協力をしなかった、というケースもあります。
相続が発生すると、その人の銀行口座からお金をおろすにも、その人の不動産の名義を変えるにも、相続人全員の同意が必要なんです。
つまり、その中の一人が行方をくらませるだけで全て頓挫してしまいます、相続は先に進めません。
同様に、相続人の中に認知症の方がいる場合も相続は難航します。
相続人の一人に認知症の方がいた場合は、その人の後見人が必要になります。
が、例えばですがこの候補者が決まらなかったら?
はい、諸々の手続きが止まってしまう、という訳です(-_-;)
これ、相続する財産は銀行の預金のみで、相続人が全員同意していて、それぞれの相続分は法律で決められている額で良い、というおよそ揉めるとは思えない状況であってお、認知症の方が相続人の中に一人でもいた場合、後見人がいないと諸々の手続きに金融機関は応じてくれません。
どうでしょう? 「ご本人が生前にきちんと財産分与なり、土地の処分なりの対策をしていてくれれば、こんなことには……」というケースに当てはまりませんか?
なぜなら、遺言書を書いて、遺言執行者を選任していれば、協力してくれない相続人がいても、あるいは認知症の相続人がいようと、ほかの相続人は自分の取り分について手続きをすることが可能なんですから。
いかに先手先手と対策をすることが重要であるかを例示している事例だと思いますが……そういう意味では、私は父親が病気を患った後に自覚を持ってくれて助かりました(-_-;)
そもそも40代の私が終活なんて、全然考えていなかったのが本音なので、先にこういう感じで対策を打つなり知識を蓄えるなり行動を起こすなり、時間を持つことが出来ましたからね。
やはり、終活とか相続などいうのが、遠い世界の出来事のように、病気を患う前の父も、そして私も考えていたからでしょう。
しかし実際は、相続はとても身近なもので、すべての人に関係があります。
「ご本人が生前にきちんと財産分与なり、土地の処分なりの対策をしていてくれれば、こんなことには……」などと思ったところで、相続が発生した後ではどうにもなりません。
また、いくらこの人には遺言書が必要だと思ったところで、勝手に遺言をつくるなどと
あなたが元気なうちにできる対策は、相続が起きてから専門家ができるフォローと比べても、とても有力な効果を発揮するものであることを覚えておいて下さい。
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