親の終活と相続対策

終活

これまでの記事で、終活は親御さんとの対話を通じ、彼等を生きた教材とすべし、という内容のことを何度か書いていますが、さてそれでは具体的にどのように対話していけばいいんでしょうか。

いきなり終活のことについて切り出しては、『俺が死ねばいいと思ってんのか!』という具合に変に話がこじれる可能性もあります。

私のように親御さんの方から切り出してくれると確かに有難いんですが、皆が皆、ウチの父のように病気で倒れてから万一に備え始める、というわけでもないでしょうし、最悪の場合はそのままお亡くなりになってしまうことも有り得る訳です。

では、どのように親御さんとの対話を行い、親御さんの終活に備えることで私たちの予行演習とすべきか。

まずは、身近な話題を振ってみましょう。
最近はウクライナ戦争や円高のダブルショックも手伝って、物価高ですし光熱費も増加しております。

『先月の光熱費ってどんな感じ? 私のところ、結構上がっちゃっているんだけどそっちは大丈夫?』
と、こんな感じで、親御さんに話題を振ってみるのです。

『余裕余裕、全然平気』……なんて言う親御さんは、そんないないでしょう。

大半は『こっちも上がってる』とか支出が増加している内容を言うでしょうし、中には『家計が火の車だ、あんまり大丈夫じゃない』という内容でヘルプを求めてくる親御さんもいるかもしれません。

『こっちも上がってる』くらいで話が終わる場合はさらに話題を振らないといけませんが、後者の内容の会話が出てきましたら、1カ月の生活費が年金収入の範囲内で収まっているのか確認してみると良いでしょう。

もし家計が赤字で、貯蓄から取り崩しているのであれば入院や介護などの万一の事態の際、肝心の資金が不足してしまう可能性が発生します。
入院・介護費用の資金が不足する=子どもが立て替える、ということは十分有り得ることなのです。

ひょっとすると、月々の支出でオーバーした分については私達、子供側で補填・仕送りする必要も生じてくるかもしれません。
こういうケースの場合で兄弟姉妹が貴方にいらっしゃるなら、一人で全部負担しようとはしないでください。
皆さんとどのように負担を分担するのか、話し合いましょう。

光熱費などについて『こっちも上がってる』で会話が展開されていくのならそのまま話の流れに乗って家計の状況を聞くのが良いのですが、もし会話がブツリと切れてしまった際には、普段の買い物はどうしているのか聞いてみる方法も良いでしょう。

年をとると、体の色々な場所にガタが出てきます。
以前の記事で先述したように、父は脳出血で倒れたあとは足を引きずることもあってか、運動する機会がかなり減ってしまったようで、私は母に『とにかく動かせろ、足が萎えたらボケてしまう可能性が高くなるし、動かなくなれば衰える一方だから』と言っております。

動くのが億劫になってくるんですから、普段の活動も労力を割こうとするのが当たり前であり、そうなってくると炊事は出来合いのおかずに頼る頻度が高くなるかもしれません。
週に数回ならいいでしょうが、日常的に利用する場合は食費が高くつきますし、スーパーの総菜などは味付けが濃いめが基本。
高血圧症や糖尿病などの持病がある方は悪化させてしまう可能性もあるので、その辺りは注意が必要になってきます。
親御さんが高齢にると食事の支度や後片付け、家のなかの掃除やゴミ出しといった日常的な活動が、不目由になったらどう支援したらいいのか、という事柄も同時に考えておきましょう。

こんな感じで親御さんと対話することが、実はちょっとした相続対策につながります。

貴方が私のように進学と同時に実家を出てそのまま就職したケースですと、親御さんと過ごした時間は高校生までの18歳までになりますので、意外と少ないかもしれません。
実家で過ごしていた時間も、部活動を行っていた人は学校の授業が終わると部活動、その後に帰宅し夕食。そして、宿題、入浴、就寝と、1日のスケジュールはみっちり詰まっている場合、親と話をするのは、食事の際ぐらいかもしれません。
さらには食事の際の会話も『学校の成績はどう?』『どこに進学するに進学する?』と、貴方の進路や貴方の将来についての話が話題になることが多いかと思われます。

私が何を言いたいかと言うとですね、私、親のことを把握する時間が人生の中で足りなかったんじゃないのかなぁ、と思うことが増えまして(汗)、

例えば、父はどんな趣味があるのか。
母は、どんな料理が得意で、何が好物なのか。
家にいる間、両親は普段は何をしているのか。

……うん、こうして書くと、両親ともにパチンコに行く、畑に行って体を動かす、という大雑把な行動と趣味はわかりますが、帰省時に話し合ってみるまで、父がマーボー豆腐がそんなに好きじゃない、というのを知った際には軽く驚きましたね(あんなに美味いのに……)

パチンコにもいかずに畑にも行っていない時に何してんの? と疑問に思った時には『私、親の普段の生活はあまり知らないんだなぁ』とちょっとしたショックを受けましたね、高校生までの18年間までとはいえ、あんなに長い時間一緒に過ごしたのに。
こんな感じで、私もそうでした。
 
「もっと父と母から話を聞いておけばよかった」と、二人が亡くなったら後悔するなコレは、と私は思いましたね。
貴方はどうでしょう? 親御さんのこと、どのくらい理解できています?
話し合える時間は、あとどのくらい残っているでしょうか。

親御さんがこれまでにどんな歴史を歩んできたのか、そのライフヒストリーを聞くことは、自分のルーツを知ることにもつながります。
両親がどこで生まれて、祖父母はどんな生業をしていたか。
通っていた学校、どんな学生時代だったか。
趣味や学生時代に打ち込んだこと、楽しかった出来事など、時系列に沿って書き出しましょう。

親がどんな歴史を歩んできたかを聞いて、『家族のヒストリー表』を作ってみると、どうなるか。

まず両親はどこで出会って、何がきっかけで結婚したのかがわかります。
その過程で、その前に結婚歴があり、子どもがいた、という方も中にはいらっしゃるでしょう。
さらには、貴方たちに隠すつもりはないが、あえてこれまでは伝えてこなかった、という可能性もあります。

そう、親に離婚・再婚歴があると、相続の際、トラブルにつながりやすいんですよね……

家族のヒストリー表を作ってみると、こういう『これまでにはわからなかったこと』がポロリと判明することも有り得ます。
両親が再婚で、先妻・先夫との間に子どもがいたことを、再婚後の子どもたちはこれまで知らなかった、なんてケースを私は一つ知っています。
友達からまる一日愚痴られましたけど、そりゃ愚痴りたくもなるよなぁ……アイツ、よく私に愚痴るだけで感情を処理できたなぁと今思い返してみても感心してしまう。

いや、これ両親が健在だったからまだ良かったですが、亡くなった後でしたら相続が色々と大変なことになっていたかもしれませんよ(汗)

例えば、父親が亡くなって相続の手続きをしている最中に、戸籍謄本を取り寄せたら知らない異母兄弟がいた、なんてケースを想像して下さい。

だって、今、どこにその異母兄弟が住んでいるのかわからないんですよ(T‐T)
消息不明です、こんなんどう探せ、と(汗)

また、父親が遺言書を作成していなければこれまた面倒なことになります。
何故なら『遺産分割協議書』に異母兄弟を含めた家族全員の実印が必要なんです……うへぇ、想像するだけで大変なのがわかるでしょう?

まだありますよぉ~、さらには法定相続人の人数が確定しないと相続税の基礎控除額(3000万円十〈600万円×法定相続人の数〉)がわからない!

そう、相続税の計算もできないんです……!

私の場合は一人っ子でしたが、家族のヒストリー表を作ってみて、改めて『隠し子はいないな』というのが確認出来ました(笑)

まぁ、そういうケースはほとんどないでしょうが、

親御さんが亡くなったときに誰が相続人になるか、こういった『家系図』を作っておくと安心できますし、兄弟姉妹の間でも話が進みやすくなるでしょう。

過去から現在まで話を聞いてまとめるとと、『未来』についてのぼんやりとしていたイメージが、輪郭を帯びてはっきりとしてくることがあります。
そういった意味でも、親御さんとの対話はとても重要です。

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